A boiled egg

ぼちぼちいこか

水の肌 感想

 この作品は純粋にただの推理小説でアニメとかラノベとかの感想ではないので、先にそれだけ伝えておく。まあアニメの感想とかばっか書いてるからねこのブログ。

 

 

 

 これは、松本清張の短編小説集で、全5編から成る。内4つはオリジナルで、1つは三億円事件を題材とした作者なりの推理の陳述のようなものになっている。

 確か読み始めてから少なくとも半年ぐらいは積んでた気がする。流石に読み切らんとなと思い、最近平日にやってる派遣バイトの休憩時間に20分かそこらだけ読んで、今日やっと読み終わった。

 

 

 

 各短編の内容については割愛させていただくが、久しぶりに松本清張の小説を読んで、やはりこの人は日常からふと湧き上がるマイナスの側面に着目しているなと感じた。

 これは「水の肌」の解説に書かれていることの受け売りだが、あくまでこの作者は、犯罪のトリックや事件の背景にある巨大な何か、といったような劇的なものではなく、犯罪や事件が起きなければ明るみに出ないような、あらゆる立場の人間の感情や心理に強い関心を持っているように思えるのである。犯罪のトリックにおいても、技巧を凝らしたものというよりか、犯罪を追う人間の無意識の決めつけを巧みに使っているのである。「水の肌」においては、特に男女関係のもつれを出発点としたものが多いように感じられる。

 

 というか、松本清張の作品は男女のもつれ的なものを扱ったものが多いように感じる。私は松本清張以外の推理小説家の本をまともに読んだことがないので、他者との比較はできないし、そもそも松本清張の小説もそこまで読んでいない(水の肌以外には「点と線」ゼロの焦点」「砂の器」しか読んでない)。なのであくまで私の偏見ではあるとは思う。

 ただ、その偏見を承知で言わせてもらうと、松本清張にとって恋愛から来る感情や心理といったものは、人間の日常的な負の意識を引き出すものとして、根源的なトリガーの一つであると思っていたのではなかろうか。確かに恋愛というものは理性よりも本能や感情が大部分を占めるものであるし、人間の素を暴き出すにはうってつけのように私には思える。

 

 

 ちゃんとした推理小説松本清張のしか読んでないと言ったが、それは上に述べたような彼の持つ関心により紡がれる、日常のジメジメとした雰囲気が好みだからかもしれない。私的には、国や政治とかが出てきてスケールがデカくなると、目の前にある事件と真相との関連性の乖離が起こってしまいわけわかんなくなるので、あまり好きではない。もちろん物に依るが。

 

 

 

 

 私の好みが理解してもらえたかどうかは不明だが、おすすめの小説あったら教えてください。アニメやラノベでも全然いいよ。