A boiled egg

ぼちぼちいこか

異世界誕生 2007 感想

 今回は講談社ラノベ文庫から刊行されている「異世界誕生 2007」を読んだ。同レーベルから刊行されている「異世界誕生 2006」の1年後の物語である。作者曰く「続編」ではないと言うが、私的には前作を読んでた方が100倍楽しめると思う(私自身前作の細かい内容は忘れてはいるが、それでも前作を読んだ方がいいと思うので、少なくともざっとした概要は把握しといて損はないのではないかと思う)。

 

 前作の「異世界誕生 2006」が2006年頃のオタク事情を背景にして展開されていたのと同様、今作も2007年頃のオタク事情が舞台設定として散りばめられていた。私はその頃をオタクとしてリアルに生きた人間ではなかったが、姉がオタクなのを傍から眺めていたり2007年から少し経った後にネットに片足の先っぽを突っ込み始めた私からすれば、なるほど確かにそんな事もあった気がするという懐かしさを覚えた。秋葉原ホコ天でのハルヒedダンスのくだりは、最後警察に追っ払われるあの動画がすぐに連想されたし。今作はニコ動には触れられていなかったが、次作がもし出ればそこら辺も当時のネット事情として語られるようになるのではないだろうか。

 

 前作は「作者」から見た物語の創作というテーマだったが、今作は「読者」から見た物語の創作がテーマであったように思う(これはあとがきに書かれている事の受け売りなのだが)。

 「作者」には熱い情熱と想いを持って作品を書き上げて欲しい、というところからさらに発展させて、「読者」はこのような想いを持って物語と向き合って欲しいし、「作者」はそれに応えるように且つ自身の想いも忘れずに物語を創作して欲しい、という事を表現した作品であったと私は思っている。

 その「想い」はどのようなものであるかは人それぞれであるので客観的正解はないので、この作品を読んでそれぞれが感じたものがその人にとっての正解であろう。もちろん上述したテーマそのものも私個人の主観が含まれているので、テーマそのものも客観的正解はないだろうが。

 

 この作品には感動的で綺麗なものは存在しなくて、人間及び人間関係の暗い部分に焦点を当ててそれらにケジメをつけるという形だけで物語の終着点としているので非常に現実感がある。舞台背景も当時の状況をそのまま使っているので、本当にこんな話があったかもしれない、もし私の身内だったらというリアルさを感じられるところが、多少の親近感と恐怖感を覚える。私はこのシリーズのそんなところが好みなのである。重い話大好き!()