A boiled egg

ぼちぼちいこか

〆切前には百合が捗る 感想

 「〆切前には百合が捗る」というラノベを読んだ。既刊2巻。

 

 

 作品名通り、百合作品である。主人公はLGBTのうちレズビアンで、地元の高校の友人や家族にそれを打ち明けたところ拒絶されてしまい、耐えきれなくなって家出し、親戚を頼って東京までやってきた。その親戚はラノベの編集者であり、その担当作家に主人公が恋をする、といった感じの物語である。

 

 知ってる人は知ってると思うが、この作品は「妹さえいればいい。」のスピンオフ的な立ち位置である。確か元々は、妹さえのあとがきで作者が「次回作あるいはスピンオフでのタイトル候補あるんですけど、どれがいいですかね?」みたいな感じで挙げられてたうちの一つだった気がする。

 

 スピンオフではあるが、妹さえは読んでなくても全然OK。妹さえとの共通の登場人物として白川京(本作での主人公が頼った親戚にあたる。従姉妹の関係)がいたり、その他の妹さえの登場人物が伝聞の形で出てきたりはするので、読んでたら読んでたで感慨深く感じるものはある。が、メインの登場人物はほとんど本作初出だし、百合作品として読む分には必須ではない。

 

 この作品は度々LGBTに関する用語を使うので、少し現実的で重い感じなのかなと思われるかもしれないが、案外そんなことはない。性的マイノリティとして考えなければならないこと、割り切らなければならないこと、乗り越えなければならないことみたいなのは勿論描写されているが、基本的には「世間体なんか気にせずに、お互いがしたいようなやりたいような恋愛を気楽にしていけばいいじゃん」みたいなスタンスである。遊んだり旅行行ったり美味しいもの食べたりっていう場面が多く、明るくて楽観的な印象を私はこの作品から感じているので、このように思うわけである。

 

 そんなに大きなシリアスイベントもなく、2人の女性が出会い、恋人関係になり、共に楽しく過ごす、という感じなので、重苦しい百合を求めてる人には向かないかもしれないが、日常系百合作品を読みたい人にとっては良いかもしれない。主人公家出してるので、そこに関わるシリアスイベントは通らざるを得ないが。

 

 とりあえず2巻で終わりということらしい。作者のやる気と売り上げ次第で続きが出るかもしれないらしいが。