A boiled egg

ぼちぼちいこか

結城友奈は勇者である 勇者史外典 上巻 感想

 勇者史外典は、「勇者である」シリーズの勇者以外の視点から語られた作品である。上下巻構成で、取り敢えず上巻を読み終わった。

 

 ゆゆゆい(スマホアプリゲーム)以外のストーリーは履修済みなので、わりかし物語の背景とかはすんなり理解できた。ゆゆゆいもリリース当初少しだけやってたので、ゆゆゆいとの繋がりもなんとなくは分かった。ただ、うろ覚えのキャラクターもいるので、何回もネットで調べて頑張って思い出したのも事実だが。特にこのシリーズって苗字が重要になってくる場合がしばしばあって、言うほど強い関係があるわけではないけど、多少は家系的な繋がり云々はあるからややこしいのよね。

 

 上巻は、「乃木若葉は勇者である」の時代の巫女の視点から語られている「上里ひなたは巫女である」と、勇者でも巫女でもない人物が主人公の「芙蓉友奈は勇者でない」の前半が収録されている。日常4コマ漫画以外のシリーズ全部を履修した上で外典を読むことをお勧めする。ちな、のわゆはアニメ3期じゃなくて書籍の方で履修してな。

 

 

 

 

 

上里ひなたは巫女である

 のわゆの時代の巫女、特に上里ひなた、花本美佳、安芸真鈴の3人の視点で描かれているのが、「上里ひなたは巫女である」である。

 これを読むまで忘れてたけど、勇者って巫女に見出される存在だったね。のわゆでもチラッと言われてた気がするけど忘れてたわ。

 

 のわゆ時代の勇者は、これまでは勇者間の関係性しか描かれていなかったけど、その勇者を見出した巫女とも関係性はあるはずで、少なくとも巫女の方は強くそれを思っている、というところがとても面白かった。「ひなたと違って傍にいることはできなくても、貴方のことは想い続けています」という具合だが、これを恋愛的ではなく「敬愛」だと言った美佳の言葉は特に印象的だった。

 巫女によって勇者に対する考え方は色々だと思うが、美佳にとっては神のような自分には遠く及ばない存在であり、「恋」というよりかは「敬う」方がしっくりくるということだろう。また、美佳が千景に会うことをためらっていた理由の一つには、遥か上の存在である勇者にそうやすやすと会いに行ってもいいのだろうか、という考えもあったように思われる。

 一応主人公はひなただが、美佳が千景のもとに行く話が正直一番好き。

 ちなみに千景は美佳のことをどれくらい覚えていたのだろうか。それによって百合的な尊さが変わる気がする。千景が死んでからは美佳がずっと傍にいたわけだし、非常に気になるところ。球子と杏はまあ覚えてただろう。定期的に会ってたみたいだし。ひなたと若葉に至っては最早夫婦みたいな感じだったから言わずもがなですね。

 

 ひなたが大社をどうやって掌握したのかはのわゆでも少し語られてたけど、今回で詳しく分かることになった。巫女が一致団結して神官に謀反を働いたわけだが、思わず「大社を、ぶっこわす!」(N党並感)と考えてしまった。

 

 余談だが、巫女や勇者の方々いつ結婚して子供作ったんだろうか。どのシリーズでも一切語られてないからすごく不安になってくる。百合の空気感ぶち壊してもいいからちゃんと描写してほしい。養子縁組もあり得るけど、少なくとも乃木若葉と乃木園子はどう頑張っても血統でしか説明できないぐらい似てるんだよな……

 

 

 

 

芙蓉友奈は勇者でない 前半

 勇者でも巫女でもなんでもない人物が物語の中心になるのは、恐らくシリーズ史上初じゃないだろうか。まあ勇者でも巫女でもない代わりに別の何かが出てくる気はするけど。

 時代は神世紀29年で、ひなたや若葉とほぼ同じ時代である。ただ、情報統制がかなり行き届いているらしく、勇者や壁、バーテックスについて都合の悪い部分を隠しているのは流石大赦だなと思った(もっと言えばひなたの力かな?)。もとからこういう情報統制力があったからこそ、数十年後に行われる大規模な検閲ができたというのはあるだろう。たしか神世紀100年ぐらいだったっけか。

 

 この作品で登場するメインキャラクターはどちらも「友奈」なわけであるが、神世紀のだいぶ初期から逆手を打った赤子にそう名付ける習慣はあったみたいだ。彼女らは神世紀10年前半頃に生まれてるはずだから、大赦は組織改革と同時にそういう名付けの習慣を流布したんだろうか。

 「勇者部」ももうこの頃に生まれている。ゆゆゆ時代の勇者部とは意味合いが大きく違うが、そういう名前の組織が作られたという意味では、多分神世紀史上初の勇者部だろう。基本的に芙蓉が、壁の外に行くぞって陰謀論唱えながら柚木を振り回してる感じだが、探求しようとするその心は素直に素晴らしいと思う。

 

 芙蓉友奈は、定期検診とか日記に書いてるし恐らく病気的なものを抱えているんだろうな。下巻でそのことについて語られると思うが、死ぬ予感しかない。自信満々で大口叩くけど、運動音痴で怖がりなところがすぐに出てしまう芙蓉の性格すごい好きだから生きてくれ。

 芙蓉の母親がアメリカ人ってあったけど、たまたま日本に来ててそのまま四国で暮らす羽目になったって人はやっぱりいたのね。まあ現実の災害でもよくある話だけど。