2024夏アニメの「負けヒロインが多すぎる!」を見た。

アニメ化決定前からこの作品の存在は知っていて*1、テーマが面白そうだなーと思っていたので、見てみた。
結論から言うと、なかなか面白かった。「負けヒロイン」がなぜ負けたのか、負けたことに対してどう向き合っていったのかが丁寧に描かれ、時にはそれをコメディに絡めて昇華させていくテンポ感が心地よかった。
唯一マイナスポイントを挙げるとすれば、主人公の妹が物語の展開上必要か?と思ったぐらいだろうか。普通に、うるさくておせっかい過ぎるだけにしか思えなかった……
「負けヒロイン」という概念がメインテーマ
言うまでもなく、この作品は「これまでのラブコメ史におけるアンチテーゼ」である。これまでの一般のラブコメでは、あくまで主人公と結ばれたヒロインに最終的な焦点が向かうようになっていた。結ばれなかったヒロイン、すなわち俗に言う「負けヒロイン」はヒロイン戦争に敗退した時点で、物語からは実質的に退場することになる。
しかし、負けヒロインも一人の人間であり、彼女らにも彼女らしか持っていない想い、考えや価値観、そしてその後の人生がある。そこにもしっかり丁寧に向き合うべきだよね、という考え方がここ最近よく言われるようになってきた*2。そのような思想の一つの表れとして「負けヒロインが多すぎる!」があるように思う。
特に、この作品では「負けた直後~気持ちの整理をつけて次の人生を歩む」までを丁寧に描いてる。他の一般的なラブコメでは「数年後の負けヒロインはこういう人生を歩んでいました」ぐらいのことは描写されるが、そこまでの過程まで描いているものは少ない。気持ちに整理をつけて次のステージに向かう過程まで見て初めて「ラブコメ」の「ラブ」の物語が完成すると私は思っているので、ここは非常に重要視している。
またさらに言えば、この作品では「負けヒロインが負けた理由」についてもある程度掘り下げている。「負けヒロイン」をテーマにしている以上、むしろそこが一番重要ではある。そして、負けた理由について、本作ではどの場合においても「勝ちヒロインの方が、とにかく勝ちにこだわった『悪い女』だった」ということが共通している。これは、『悪い女』ではない負けヒロインの方に共感を持たせるためのテーマ上の問題だとも言えるし、逆に勝ちに貪欲になって『悪い女』になるしかない、という意味とも取れる。確かに、どんなことでも勝つためには貪欲に行動し、ある程度は腹黒くならなきゃいけない、というのはその通りだと思う。
懐古的なEDたち
各ヒロインごとに割り当てられているED曲は、J-POPのカバーソングとなっている。
八奈見は「LOVE2000」、焼塩は「CRAZY FOR YOU」、小鞠は「feel my soul」という2000年~2010年代ごろの曲という、20代後半以上のオタクを狙っているとしか思えない選曲である。「平成の大ヒットソング」というだけでなく、「それなりに流行りはした程度」のものも含まれていて、尚更その時代をリアルに生きてきたオタク達を狙い撃ちしている感がすごい。
私の場合はどの曲も「あーなんか聴き覚えあるなあ。懐かしいなあ。でもどうやってこの曲知ったか覚えてないなあ」という感じだった。案外、懐古的な感情が引き出されるのはそういった場合も多いのかもしれない。「よく覚えてないけど、なんとなく頭の片隅にある過去の断片を掘り起こす、その思考作業の過程」の中で懐古感が生まれてくるというのは十分に考え得る。
さて、この作品ではなぜ昔のJ-POPをEDとしてカバーしているのか、を考えてみた。単に、20代以上に対するマーケティングと捉えることもできるが、この作品のテーマと関係したある一つの解釈ができるのではないか。
それは「過去のラブコメ作品での負けヒロイン達へのレクイエム」である。作中で負けヒロインを「死体」「幽霊」「ゾンビ」という、死の表現を用いて揶揄するシーンが散見される。この「負けて死んでしまったヒロインへのレクイエム」として懐古的な曲、即ちラブコメの一時代を築いた平成期の曲を用いたのではないか、と考えている。
この解釈を支持する根拠としては、「死の表現」以外にも、メタ発言的要素の散見からも言える。登場人物らの所属する文学部という性質を活かして、「小説」という媒体を通して自身らの境遇について描写したり、もっと単純な例で言うと「何で制服のリボンこんなに多いの!」という発言が作中キャラからされているなどである。
確か制服のリボン発言では「”うちの学校の”制服のリボンが多い」とまでは言ってなかった気がする。普通は「うちの学校」まで含めて言うようなものだが、それを省くことで一般論として「(アニメで出てくる)制服のリボンやデザインが変」というメタ発言のように思われる。まあリボンに関しては、メタ要素を表現しているかと言われれば無理がある気もしなくはない。そもそもセリフの文言を間違って記憶してる可能性もあるし……
いずれにしても、制作陣としてはそこまで考えてないかもしれないが、視聴者側の一つの解釈として「レクイエム」はアリなんじゃないかと思う。作品の解釈というものは制作陣の考えのみで構築されるものではないし。
おわりに
個人的には小鞠知花が一番可愛いな~~~と思った。「今の関係を壊してもいいから、気持ちを伝えたい」という想いがまっすぐ過ぎて、かつ強い心を持っていて素晴らしいと思った。振られた後も、恋愛面だけでなく、部活のことなど総合的に人間として成長している感が一番ある。どこかの青髪の暴食系ヒロインは見習いなさい
「CV:寺澤百花」というチョイスも素晴らしかった。陰キャ系キャラを演じたら一級品の逸材なんじゃないか、とさえ思える演技だった。あとEDの歌うますぎてビビった。まだまだメインでの出演作品が少ない声優*3なので、是非ともこれから売れていってほしいと願う。陰キャもそうだけど、ショタキャラも絶対合うと思うんだよな~
妹はやっぱりいるか……?という感情はやはり最後まで拭えなかった。ただのやかましいだけのキャラなんだよなあ……()
まあ、「ストーカー気質なほどにまでおせっかいで、デレデレな妹キャラ」というのにも負けヒロイン的要素が詰め込まれているので、その象徴として存在していると言われれば、まあ納得はできなくもないが……