A boiled egg

ぼちぼちいこか

巨人の磯 感想

 松本清張の短編推理小説集「巨人の磯」を読んだ。最初と最後の話を読んだ時間差が2年ぐらいあるの笑えなさすぎる。積読と遅読が全然治らない私です。最近、遅読解消のコツが書かれた記事を読んだので、これからはそれを実行してみようと思ってる。

 

巨人の磯

 本のタイトルにもなっている話。タイトルの通り、巨人のように膨れた水死体が磯で発見されるところから始まる。読んだのだいぶ前だからあまり覚えてない。水死体は死亡推定時期の誤差が大きくなるのかーって勉強になった記憶はある。

 

礼遇の資格

 銀行協議会副会長のおじいちゃんとバーのマダムの若い女性との年の差婚から始まり、様々な痴情のもつれから事件が起こる。ラストの女性のセリフに彼女の求める「礼遇」と「資格」がよく表れているのだが、腹黒すぎて笑う。良くも悪くも正直。

 

内なる線影

 絵描きをしているしがないヒッピーとその画伯の老人、そして画伯の若妻が別荘地でくつろぐ中で起こる変死事件。サスペンスにおける、老人の男と若妻の間の痴情のもつれって、大体の場合「若妻の性的な欲求不満。老人が夫であるが故に、外を満足に出歩けないという不満」から来ることが多い気がする。この話も、大方そんなところを発端としている。

 「線影」というのは、絵を描く時の手法の一つであるらしい。

 

理外の理

 とある雑誌がリニューアルする際の方針として、執筆者のラインナップを完全に刷新しようとなった。それまで寄稿してくれていたある執筆者は、新しい方でもなんとか載せてくれないかと、何度も出版社に持ち込みに行くが、ことごとく断られてしまう。最終的には「これが最後の持ち込みです」と言って、出版社の対応を皮肉るような小説を渡して、「ちょっとやってみたいことがあるから、ここに明日来てほしい」と告げる。この後誰か一人ぐらいは死にそうだなーってことは、大体の人は想像つくと思う。

 

東経一三九度線

 「太占を行っている/行っていた神社が、ほぼ東経一三九度線上に乗っている」というところに注目し、著者の斬新で独特な説を、登場人物のセリフを介して唱えているのが、この話の特徴的なところである。その新説に興味を持った人物らが神社に見学に行き、そこで事件が起こる、という結末になっているため、考古学的側面と推理小説的側面の両方を持っているというわけである。著者は結構、史料を基にした考古学・歴史学的考察や人物描写をよく行っている印象がある。

太占 - Wikipedia