A boiled egg

ぼちぼちいこか

ゲーム「ソラコイ」感想

 Chelseasoftのエロゲ「ソラコイ」をプレイした。なお、Chelseasoftは現在活動休止中の模様(会社法人自体は存続してるらしい)。

あらすじ

 映画部で活動している、監督のタクト(主人公)、幼馴染のヒカリ、後輩のアイリ、先輩のナミ。ある時撮影した映画の試写をしていると、もう一人のヒカリが現れてしまった!

 もう一人のヒカリは、自身もヒカリであり、かつタクトの幼馴染であるの一点張り。区別するためにソラと呼ぶことにした。

 ソラも交えて、学園祭に向けた映画撮影を進めていくこととなる。

 

って感じの内容。

キャッチコピーの一つは「幼馴染 vs 幼馴染」

 

登場人物

ヒカリ

タクトの幼馴染。生まれた日も同じで、現在まで何をするにも一緒に過ごしてきた。

 

ソラ

突如現れた、素性不明の自称ヒカリ兼タクトの幼馴染。ヒカリと瓜二つだが、ツインテールのヒカリと違って髪を下ろしている。

 

アイリ

映画部の1年生。演劇部と迷った果てに映画部を選んだのもあってか、役者をメインでやっている。

 

ナミ

映画部の3年生。もっぱら裏方の仕事をしている。

黒髪ロングなので、私の好みに深く突き刺さった(重要)

まあ他3人も好きなんですけどね……宮坂みゆ・宮坂なこという、つよつよ絵師が描いているので……

 

攻略推奨順は、(ナミ、アイリ)→ヒカリ→ソラ、である。()内は順不同でOK。

タイトルやあらすじを見れば分かるが、この作品はヒカリとソラの物語であるので、この順番を推奨する。最初からソラルートは選べるが、ソラは必ず最後にしよう。ヒカリは最悪3番目じゃなくてもいいが。

 

感想(ネタバレ無)

 一言で言えば「テーマは悪くないが、非常に惜しい作品」であった。

 一番の原因は、分量の少なさと、そこから来る説明・描写不足である。フルプライス作品にも関わらず、プレイ時間は13時間である(エロゲ―批評空間での中央値)。ミドルプライス並である。まあ私はセールで500円で買ったけどな!

 その短さの上で、4人の攻略ヒロインに時間が分割されるので、一つのルートがあっけなく終わってしまう。さらに、CGがあってほしい場面のほとんどで立ち絵のみなのもかなり残念だった。終始「もっと深堀った展開がまだ作れただろ!」とか「こんな重要なデートシーンでなんでCGが1枚もねえんだよ!」とブチギレていた。

 ただ、そのあっさり感がむしろ読みやすさを助けてくれたかな?と思わなくはない。割と誤字脱字多かったけど……

 色々と説明不足なところはあったにせよ、それでもソラルートは普通に良かったし感動した。「幼馴染への恋心とどう向き合うべきか、どう伝えるべきか」ということに関して素直で切実な思いが心に刺さった。

 OPやEDの歌詞にもそれは良く表れているので、是非とも聴いてほしい。EDはGReeeeNの愛唄にめっちゃ似てる

 

ストーリーネタバレ兼感想

ソラの正体について

 ぶっちゃけ1つしか思い浮かばないが、解釈を膨らませれば2通りあると思う。

 

 まず前提として、ソラは別の世界でのヒカリ自身であり、その世界ではソラは気持ちを伝えることなくタクトは死んでしまっている。

①ソラは別の世界線の未来からやってきたタイムリーパーで、タクトが死ぬ運命を変えるためにやってきた。また、元の世界で伝えられなかった気持ちを伝える決心を持っている。つまりシュタインズゲート

②作中の出来事は全て1本の映画作品であり、そこにソラが入り込み、タクトが死なず、かつ幸せになる結末を作った。ある種のソラの夢オチ。

 

 ①は、タイムリープものの話題があったのを踏まえると、あり得るかなと思ったからだが、しっくり来るのは②の方である。

 OP映像でヒカリ、アイリ、ナミはスクリーンの映像内にいるのに、ソラのみスクリーン前に立っているから、というのが一つ目の理由。

 二つ目には、最後のソラのセリフの

「私こそありがとう、素敵な映画だったよ

「もう会えない大好きだった幼馴染の顔を見つめて、私は映写機を止めた

で物語が締めくくられるから。

 これまでソラが「ソラコイ」という名の映画のシナリオに干渉してきて、満足な結末を迎えて観客席側に戻り上映を終えたとするのが一番妥当な気がする。コラ!「第四の壁」を行ったり来たりするんじゃありません!

 ①の場合でも、映画の中を別の世界線と解釈すれば大勢は似たようなものだが、解釈がより簡潔にまとまっている②の方が適切だと思う。まあ②だと、タクトの死亡がどう足掻いても揺るがない事実になっている(別の世界線では生きている、という救いがない)、という違いはあるのだが。

 

 私は切なさがより強まる②の方が好き。プレイし終わった直後はその解釈が脳内を駆け巡って普通に泣いていた。私の性癖が歪んでいるからか分からないが、死別は決定的であればあるほど切ないし泣けるし好き。そういうのもあって②説を推してるという節もある。

 

 ソラの望む結末というのが「自身の気持ちをはっきりと伝えること」「一緒に過ごしてきた当時のヒカリが伝えることに意味がある」「既に一度亡くして伝えられなかった方のヒカリ(ソラ)が言っても意味が無い」というのも切ない……ってなる。

 人生の1回きりのチャンスの中で伝えるのが大事で、そのチャンスを1度失ったソラには結ばれる権利はない、という決意なのだろうと思う。まあ何回かセックスはしてるんですけどね。

 一応ヒカリルートでもちゃんと気持ちは伝えてるはずなのだが、ソラ的にはあれではダメだったのだろうか……確かに若干自信なさげな告白ではあったが……

EDの歌詞の意味

 「僕」から「君」へのこの歌は誰から誰に宛てたものだろうか?というのを少し考えてみた。歌詞全文は各自ググってください。

 「君はGreatest Girl」、即ち「君」は女性で、順当に考えれば、(映画の中の)タクト(僕)からヒカリ(君)に向けたものだろう。

 一方で、現実の故タクト(僕)からヒカリ(ソラ)(君)に向けたものだと考えることもできる。例えば、

・僕がいたこと忘れないで

・離れてても届くんだろう

・僕はここからでも伝えるだろう

・晴れ渡った青空  恋を掲げよう

・夜空に輝く  星の光のように

・思い出にはしないでよね  ずっと忘れないでいて

 この辺の歌詞は、亡くなったタクトが天国から見守っている、という意味合いのように思える。もちろん、映画の中のタクトからヒカリでも、遠い異国の地のタクトからの言葉だと考えれば、ある程度自然ではある。でもやっぱり天国の方がしっくりくる気がする。

 ただし、天国からの場合「指切りした約束  ずっと守れるように」がもう果たされなくなってしまっている。天国で別の形で守るよ、的な意味なのかな?

 ちなみに別案として、ソラ(僕)がヒカリとタクトの関係性(君たち)を歌ったものではないか、というのも一瞬考えたのだが、「僕」と「君」の辻褄が合わない気がするので廃案にした。

やっぱり分量少ない

 先述したが、全体のストーリーの量が少ないために、それぞれのルートに物足りなさを非常に感じる。

 ヒカリとアイリルートはまだ許せる。アイリルートは苦難を乗り越えて女優として大成する過程がエピローグまで描かれてたので、まあまあ満足。ヒカリルートは留学で離れ離れになる辛さと応援したい気持ちの葛藤の中で、最後はしっかりと見送ってくれたのが普通に良かった。

 ナミルートはオチがお粗末で素直にブチギレだった。他のどの残念ポイントと比べても圧倒的に残念だった。だって唐突な駆け落ちENDなんだもん。駆け落ちした後どうなったのかも語られないし。ワイのナミさん(ワイのではない)になんて仕打ちしてくれとんねん。

 ソラルートは説明不足感はあるものの、ダラダラと冗長的にならずにあっさり終わったのが、いい意味での虚無感や切なさの余韻を得られて良かった。まさに映画をスタッフロールまで観終わった後に数分呆けているような、そんな心地よい後味である。

 分量が少ないのにフルプライスってのが納得いかないところなんだよなあ。同じ分量で攻略ヒロインをソラのみ、ないしはソラとヒカリのみにして描写をより丁寧にして、ミドルプライスにすれば良かった気がする。今更言ってもしょうがないけど。

まとめ

 テーマも曲もイラストも良かったが、分量が少ないために惜しい作品だった。少なさは良い意味に働くこともあったが、全体的に見ればやはりマイナスと感じる。あと、映画を取り扱った作品のくせに「役不足」を誤用してたのも致命的だからな

 

でもやっぱりキャライラストが可愛いのでヨシ!!!

おわり