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ぼちぼちいこか

ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん 感想

 2023年冬アニメのツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん」を見た。やっぱ最近のラノベ原作アニメって、全部じゃないけどタイトル長いやつ多いよな。少しネタバレ注意。

 

 悪役令嬢ものアニメは最近かなり出てきているが、「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」の一期を見て以降、悪役令嬢系が大量発生した印象もありうんざりしてこういう系列は全然見ていなかった。

 この作品に関しては、「ゲームプレイヤーが、神の声としてゲームの登場人物に干渉できる」という、なんとなくどこか懐かしいシステムを悪役令嬢に採用しているのが、面白そうだと思って見た。実際私にとっては面白かった。

 悪役令嬢が救われたり報われたりするのは当たり前だが、ゲームでの本来のメインヒロインの恋もちゃんと実る話もしっかりしているのが良かった。悪役令嬢ものに関わらず、悪者が救われる話は、それ以外の真っ当な側の話が比較的蔑ろにされるイメージがあったので、素直にこの作品の、他の登場人物にもしっかりがっつりとスポットライトを当てる姿勢が素晴らしいなと私は思った。あと、ジークヴァルトとリーゼロッテの関係が、遠藤くんと小林さんの関係と照らし合わせる流れは正直ベタだが、両サイドに恋愛関係が生まれていることを考えれば、むしろその対比をやらない方が物語の構造としておかしいので、この展開はちゃんとやってくれて助かった。ベタだからこそ、描写しなきゃいけないものもあるんだなあ。

 「誰も死なずにリーゼロッテの破滅を防ぎ、ジークと結ばれるようにする。」という明確なゴールが最初から分かっているので、話の展開は基本それに突き進むだけである。ので、話の流れが割と単純明快で、話の理解で混乱することがほとんどなかったというのもポイントが高いなと思った。最近の漫画やラノベ原作のアニメって、二期を匂わせる雰囲気で終わらせる作品が多いけど、久々に12話で話が完全に完結しているアニメを見た気がする。実際このアニメの原作ラノベも全二巻で終わってるのね。

 ゴールが漠然としていると、脱線や蛇足を比較的入れやすくなってしまうので、ゴールをはっきりさせることは物語の論理の明確化の上で重要なんじゃないかとも思った。漠然としたゴールは、それはそれで話を膨らませやすいという点もあるので、一長一短だとは思う。私はアニメの物語の長期記憶が大の不得意なので、個人的にはゴールを明確にして短期的に物語を完結させてほしいな、とは思うのだけれど。

 ジークがリーゼロッテを好きになってからの恋愛の甘さ加減は正直キツい気がした。ジークの暴走具合が普通にキモイ。でもリーゼロッテが可愛いっていうのは分かる。やっぱりロングストレートの髪型の女性なんだよな。なんやかんやリーゼロッテもキツい。特にツンギレに進化した後が、見てて恥ずかしくなってくる。恋愛アニメのキツさの一つって、激甘カップルに対するただの嫉妬心だったりするんかな。知らんけど。

 古の魔女による災厄の黒幕はレオン先生だとばかり思ってたので、どこかでちらっと話題に上った「クオン」とかいう男神が黒幕だったというのは、正直拍子抜けした。こういう黒幕って、それなりに出番が多い人物なことが多いものなんじゃないんですかね。ちょっとしか出てない、よく知らん男神とか俳優とかを黒幕に出されても、ポカーンとしてしまうだけなんだよなあ。まあ、真相の論理は普通に筋が通ってて、素直に納得できたので、良しとしておこう。

 些細な事だが、一点引っかかっていることがある。10話のラストでリーゼロッテが古の魔女に取り憑かれてしまった、そんなとてつもなくシリアスな状況でも、小林さんが「リゼたん」って呼んでたのが、緊張感削ぐ発言だなあと思っていた。ゲームに干渉できるようになって、ゲームの登場人物に対する認識も、実際に生きている人間と同等のものになっていたと思っていたのだが、呼びかけ方の緊張感のなさを見ると、小林さんはまだこのゲームの認識がフィクションで止まっていたのかな、っていう深読みをしてしまう。実際のところはあの場面での「リゼたん」には何の裏の意味もないという理解の方が妥当なんだろうけど。