A boiled egg

ぼちぼちいこか

アニメ「Helck」感想

 2023夏~秋アニメの「Helck」を見た。全24話。

あらすじ

魔界のとある国。

一人の勇者の手によって魔王が倒され、 新魔王の座をかけた競技会が 開かれることとなった。
大会責任者の帝国四天王ヴァミリオは、 敵であるはずの人間の勇者 ヘルクの参加に激怒する。
勝戦を前に魔王ウルムの城が 陥落した一報を受け、
ヴァミリオはヘルクを含む 決勝に残った選手たちと共に ウルム城奪還へと旅立った。
笑顔で「人間を滅ぼそう」と語るヘルク。
果たしてその言葉は本心か? 笑顔に隠された真実とは……

(公式サイトより)

 

前半の展開

 序盤は「人間滅ぼそう!」と言いながら、人間側であるはずのヘルクが、その狙いもわからないまま、新魔王決定戦で圧倒的な力を見せつける不気味さと、チートアニメのようなシュールさが印象的である。

 魔界が主軸に置かれた物語なのもあって、魔界サイドが完全な悪役としては描かれていない。むしろ人間サイドが悪役として描かれているかな。たまによくある「人間も魔族も、結局互いの正義やエゴを押し付け合って戦争しているだけだ」みたいな、現実の戦争でもよくある形で争い合っているという感じ。


 キービジュアルの一つであるこのイラストが、とても強烈である。「人間は愚かだ!滅ぼそう!」みたいなテーマ自体はしばしば目にすることがあるが、こうも直接的に、しかも満面の笑みで言われると、そのメッセージはかなり印象的になる。その笑顔の裏にどんな暗い感情を隠しているのか、否が応でも想像させられてしまう。

 そんな謎に包まれたヘルクが、その真意もわからずに順調に決勝戦まで進み、ヘルクが魔王になった暁に彼が本当に望むものは何なのか、この先魔界、延いては人間界がどうなっていってしまうのかという不安が、物語への没入感を深めていく。

 

後半の展開

 新魔王決定戦の決勝戦前、ある魔王が討たれ、その城の奪還のために決勝戦組が魔王城へ向かう。この世界では魔王は一人ではないようで、多分江戸時代の藩主とかそんな感じなんじゃないかなと思っている。

 魔王城奪還の際に、とある転移事故に巻き込まれてしまい、ヘルクと帝国四天王の一人、ヴァミリオがとある島に飛ばされてしまう。無職転生でも似たようなのあったな。

ヴァミリオchan kawaii

 二人は魔界に帰るための旅を続け、その旅路の途中で、人間界に今何が起こっているのか、魔界全体がどのような窮地に陥っているのかが明かされていくことになる。そして、ヘルクの口からも、なぜ人間を滅ぼそうと思ったのか、彼が人間界でどんなことを経験してきたのかが語られていくことになる。

 まあまあエグいが、慣れてる人からすれば「あーそういう感じね」っていう程度の真実が待ち受けている。死んだ方がマシ、でも死ねない的な方向性。

 

終わりに

 24話終了時点で、原作全12巻のうち8巻の冒頭まで終わっているらしい。実際アニメ最終話の時点で「これから人間界を救うぞ!」みたいな感じでまだまだ話は続きそうな雰囲気だったし、回収されていない用語や伏線もあるので、できれば二期をやってほしい思いはある。

 が、アニメがこれっきりで「俺たちの戦いはこれからだ!」で終わったとしても、ある程度納得感のある締めではあったので、無くても別にいいかなとも思う。消化しきれていない部分があるにせよ、大事なのは「どう全てを説明するか」よりも「どういう後味で終わらせるか」だと思うので(もちろん前者も大事ではあるが)、締め方が及第点だった以上、もうこれで良いんじゃないかな。

 原作でも回収しきっていない伏線とかあるみたいだが、読後感は満足だった、っていうレビューもちらほら見た。この作品は、細かい伏線回収は大筋にはさして影響してこない作品ということで、筋肉ダルマのヘルクとkawaiiヴァミリオchanのアツい冒険譚として、いい意味で雰囲気で楽しめばいいんじゃないかな。序盤の新魔王決定戦の不気味さだけが少し異質だけど。